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2010年2月2日(火)-猫の不思議-

 先週のMRT「ラジオ・ペット診察室」のテーマは、リスナーからの質問に応える形での「猫の薬剤の副作用」を説明した。限られた時間内での「答え」であり、「意に染まない」ものであったかもしれない。ここで、「親仁ギャグ」的に、仮借らずに補足してみるか。
 今、注目の新型インフルエンザ(1918年に流行したスペイン風邪と構造が同型との報告もあるから、真に新型? 日本では1919年から流行。)のワクチンでもその副作用とおぼしき死亡例があることから、薬には「副作用はつきもの」で、さらに言及すれば「副作用のない薬は有り得ない」。
 猫で人間の薬を安易に投与することは厳禁である。もちろん理由がないわけではない。あるものの本では、「雑食の人や犬と、主に肉食の猫とでは身体の仕組みが異なるのである」、という曖昧模糊な見解が堂々と活字になっている。
猫は毛玉を吐くためだけでなく、野外(野飼い?)の猫は、けっこう草を食しているらしい。純の肉食動物かどうか?
 そもそも人間を含む動物の解毒(薬物代謝)にはどんな機序(機構)があるのだろうか。列挙すると、①シトクロムP450に関連・非関連の酸化反応、②シトクロムP450依存性還元反応、③加水分解反応、④グルクロン酸抱合、⑤アセチル化抱合、⑥メチル化抱合、⑦硫酸抱合、⑧グリシン抱合、⑨グルタチオン抱合がある。もちろん、これらは薬理学的ばかりでなく、普段の食生活において生理学的に機能している。
 このうち猫で問題となるのが、「グルクロン酸抱合」である。これは薬物を肝臓のグルクロン酸と結合させて水溶性物質に変え、輸送や排泄を容易にする働きである。モルヒネアセトアミノフェンクロラムフェニコールジアゼパムが代表的な非代謝薬物である。猫はこの働きに必要な酵素(細胞内のミクロソームに存在する転移酵素であるUDP-グルクロニルトランスフェラーゼ)が欠如しているため、犬や人間で安全な薬も、中毒になり易く、場合によっては死亡することもあり得る。
 モルヒネは猫でも使用するが、犬に比べ投与量が少ない。犬では抗痙攣剤麻酔前投薬としてジアゼパムを頻用するが、猫での使用は極力避ける。猫も犬ほどではないが、人の薬を誤食する。特に、アセトアミノフェンは今や大衆薬であるため、誤食の可能性が高い。ちなみに猫は犬の4分の1のアセトアミノフェンで中毒症状(50~60mg/kg)を呈する。向精神薬の服用も溢れている昨今である。
 猫を飼っている方は、「猫と犬の違い」を理解され、より注意する必要がある。猫での解毒機構の欠如は「ニャン」ともしがたいから、人間(獣医師)が注意するしかない

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