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7月14日(火)-公務員の危機管理意識の欠如は日本の危機-

 2006年12月に発生した高原町の県畜産試験場での「宮崎牛凍結精液盗難事件」。7月10日の宮崎日日新聞の一面に、「これらの県産和牛の血統を持つ子牛は、事件が発生した2006年12月の数年前から断続的に登記されており、大規模牧場では「安平」の2、3世の子牛もいたという。このため、県警は精液の流出が何らかの形で常態化しており、・・・・・持ち込んだ精液について盗品か流出したものか区別できない状態にあったと判断・・・」とある。
 牛の繁殖技術の進歩は人を凌駕するものであり、特に凍結精液を使った人工授精の始まりは昭和33年にさかのぼる。平成19年2月現在、乳用牛の飼養頭数は159万2千頭、肉用牛が280万6千頭である。生まれる子牛のほとんどが人工授精で、しかも凍結精液を使用している。また、牛の受精卵移植は昭和39年に成功している。凍結精液を入れた「ストロー」はマイナス196℃の液体窒素容器があれば、世界中どこでも持ち運びが可能である。発情の牝牛は農家や牧場に居のままで、人工授精師か獣医師が出向くだけで目的を達する。人工授精に要する時間もものの数分と短い。人工授精はこの利便性の他に、優良な牡牛の精液を量産でき経済面での貢献も計り知れない。半永久的に「日本一・宮崎牛」のDNAを保存・利用できるのである。
 競走馬では不正が行われないように、人工授精が禁止されている。利便性と経済性で恩恵を被る半面、今回の事件のような状況が起こる。北海道では何年も前から常態化していて、「安平」の2世、3世が登記されているというから、驚きである。少なくとも北海道の畜産関係者の間では周知の事実と化していたのであろう。2年以上も隠蔽していた県は、もしかしてこの「常態化」を察知していた可能性も十分にあり得る。凍結精液には、DNAという「名前」はあるが、もちろん目では読めない。精液の取り扱いを知る人物なら誰でも不正に加担することができる。ラベルの偽造も簡単だという。和牛の遺伝子が日本国中ばかりでなく、外国にも流出してないか気掛かりである。
 一方で、公務員の危機管理意識にも危惧をもつ。相当の予算を費やして作り上げた宮崎牛ブランドが、1本15万円で違法に売買された。これらの精液が受精卵に利用されたとしたら、今まで一体どの位の「宮崎牛」が「北海道牛」に化けているのであろうか。関係者は全容解明を急がなければ、第2、第3の事件が発生するのは時間の問題であろう。宮崎牛も但馬牛も前沢牛も・・・・○○牛も皆同じ「和牛」ではあるまいか、と考えているのであれば別だが・・・。
 渡辺善美衆議院議員が公務員制度の改革に尽力しているが、官僚の抵抗は大きい。役職が付く管理職については、「身分保障」をしないというものだ。今回の事件の場合、一般の会社なら相当に重いペナルティーが科せられるのは必至である。当人がそれなりの人間なら、即刻会社を去るであろう。それどころか、会社から損害賠償を強いられても文句は言えない。役職の付く公務員は、所属する部署を一般の企業や会社並みに統括してもらえばいいのである。毎日残業をしろと言うのでもない。法令や条例に縛られて仕事量が増えるのであれば、それらの廃止あるいは改正に知恵を絞るべきである。
 今も昔の親も変わらずに我が子を公務員にしたがる。彼らは異口同音に「給料が高くて休みが多く、年金で老後も安心」という。私(わたくし)的には、大学入学時に抱いた本来の夢が潰れた人間が公務員になる傾向が高いと思っている。大学3、4年にもなると公務員試験の勉強に余念がない。卒論そっちのけである。「夢破れて公務員あり」である。大阪の橋下知事のいうように新卒は採用せず、社会人を登用せべきである、と常々考えている。国家を、県を、市町村を、故郷を本気で良くしようと思う人間が公務員になってもらいたい。
 最後に、東国原知事は今回の件で高原町の県畜産試験場に一度でも足を運んだのであろうか。師匠であるビートたけしには耳を傾けるようだが、県民の声なき声にも五感を研ぎ澄ましてもらいたいものだ。

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