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2014年10月5日の「独語年中」・第2話「伊勢参宮」

 きょうは高円宮家の次女典子さま(26)と出雲大社(島根県出雲市)権宮司の千家国麿さん(41)の結婚式。去年は60年に一度の出雲大社本殿遷宮と20年に一度の伊勢神宮遷宮が重なった。女性皇族が結婚の年ごろとなり、にわかに彼女ら(失礼か)に注目が向けられる。きょうの「独語年中、それとは全く関係ないが江戸時代の伊勢参拝の人数について。江戸期、何十年に一度、伊勢参りの爆発的現象が起きたという。その最初は由井正雪の反乱の前年の慶安三年(1650年)、次いで宝永2年(1705年)、3回目が明和8年(1771年)という。伊勢松坂の出身である本居宣長の書いた「玉勝間」によれば、2つ目の宝永の大爆発的参宮では、わずか50日のあいだに参詣する者が362万人に上ったという。ある商家の小僧は、店前を掃いていてにわかに箒を放り出して(正しく箒を放棄して)その参詣行列に加わったという。この不景気、突如仕事を放り出して旅に出てもらっては困り果てるが、申し合わせがあっての長旅は許されても構わない・・・ような時間の流れの必要な時が「今でしょ」と・・・想い入った。江戸初期の国内人口は1500万人とも言うし、幕末には3000万人とも。日本人の10人弱にひとりの人間が長い日時を費やしての伊勢参宮。なんとも悠長ないい話ではありませぬか。齷齪(あくせく)働いても景気は好転しませんよ。勇気を出して「抜け参り」でもしてみましょう。もちろん、伊勢神宮でなくとも、行ったことのない一度は行ってみたい、好きな処ですよ。出典:司馬遼太郎「菜の花の沖(一)・村抜け・pp159-205」(文春文庫)。10月5日。

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