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「癌」には、それぞれの「顔=かお」がある。

 「ペット・ラジオ診察室」を始めて早2ヶ月が経過しようとしています。「ラジオ聞いていますョ」とか、「喋りが速すぎて分かりずらい」とか、「内容が専門的過ぎる」とか、「木曜の朝は、”今日は先生のラジオの日だ”と楽しみにしています」だとか、いろいろに有難い言葉をかけてもらうのが、嬉しい限りです。
 ここ何回かは、「癌」についての内容ですが、以下のように「まとめ」たものをアナウンサーの戸髙洋子さんに送付して、2週に1度、1度に2回分の録音をしています。30分程度で帰られていきますが、その後の編集が大変だと思われます。
 「癌」にはそれぞれに「顔」が有ります。具体的には、「悪性」か「良性」か(100%悪性の腫瘍もあれば、1割しか悪性でないもの)、「転移」するか「転移」し難いか、「制癌剤」が効くか全く効かないか、「手術で全摘」できるかできないか、「進行」がはやいか遅いか、などです。
 「しこり」を発見したら、出来るだけ早く病院に行き、腫瘍であれば「癌の顔」について”きちんとした”説明(インフォームド・コンセント)を受けましょう。

<5月14日放送分-猫の腫瘍概論->
注:最近の白血病ワクチンの普及でリンパ腫などの造血系の腫瘍の発生率はかなり低下しています。乳腺腫瘍も早期の避妊手術で減少しています。放送では、本文の内容と異なり乳腺腫瘍を第1位として話を進めています。悪しからず、御了承下さい。

A.猫の腫瘍の部位別発生率順位:1位がリンパ腫、2位が皮膚、3位が乳腺腫瘍。腫瘍全体の悪性率は80~90%と高い。犬では約60%が悪性。

1.リンパ腫
●第1位は白血病など造血系の癌で、その中でもリンパ腫が圧倒的に多く、猫の全腫瘍の3分の1を占める。100%悪性。
●年間発生率は10万頭当り約200頭である。平成17年度の我が国の猫飼養頭数は約1,210万頭であるから、リンパ腫の年間発生頭数は24,200頭となる。このうち30%は白血病の血液像を呈する。
●90%は体表のリンパ節や肝臓、脾臓に発生する多中心性リンパ腫である。
●その他は、胸腺型と消化管型があり、通常は白血病ウイルスは陰性である。
●白血病ウイルスはリンパ腫の発生リスクを60倍上げる。
●猫エイズウイルスもリスクを5倍上昇させる。
●白血病ウイルスを保有する同居猫や外飼いの個体では、特に白血病ワクチンの接種が望ましい。
●治療は制癌剤の投与はあるが、延命で根絶(完治)はできない。
●発生率はワクチンの普及で激減中である。ワクチン普及前の造血系の腫瘍の60~70%は白血病ウイルス陽性であったが、普及後は25%まで低下したとの報告あり。

2.皮膚の腫瘍
●10万頭当り約120頭である。同じく年間発生頭数は14,520頭である。
●内訳は基底細胞腫瘍(26.1%、ほとんど良性)、肥満細胞腫(犬に同じく悪性、21.1%)、扁平上皮癌(悪性、白い毛の猫は日光に当たることで罹患し易いとされるので注意が必要、15.2%)、線維肉腫(悪性、14.7%)の順。

3.乳腺腫瘍
●犬の発生率の半分以下。雌猫の17%である。1,210万頭の17%は1,028,500頭となるが、実際は避妊の影響でこれほど多くはないであろう。
●悪性度は85%以上と高い。
●6ヶ月齢での避妊手術は乳癌発生リスクを7倍下げる。
●6歳齢までに避妊された個体ではそれを40~60%下げる。
●いずれにしても、初回発情の前に避妊種々することが望ましい。

4.猫に多いとされる腫瘍
●犬に比べ腸管、特に小腸の腫瘍が全腫瘍の4~9%(犬では3%)と多い。
●猫に比較的多い甲状腺機能亢進症の3~5%が甲状腺癌を伴い、70%の高率で転移。

5.猫にも少ない腫瘍
●転移性でない肝臓癌や肺癌、膀胱癌などは犬と同様に発生率が低い。

B.猫の腫瘍のまとめ
●猫に多いリンパ腫は体表のリンパ節(下顎・ソケイ・腋下・膝下リンパなど)が腫大するため、早めに発見して制癌剤などの投与で寛解・延命が可能。
●猫のリンパ腫をはじめ造血系の癌は白血病ウイルスが大きく関与。一部で猫エイズウイルスの関連も示唆されている。ワクチネーションの励行が望ましい。
●犬と同じく皮膚・皮下織の腫瘍や乳癌が多いため、また甲状腺の腫瘍も少なくないことから、日頃よりよく触って早期に発見し、外科的切除を行うことでで完治が可能。
●猫も犬同様、初回の発情前(6ヶ月齢以下)に避妊手術を実施する。
●腸管の癌については、腫瘍の外科的切除で完治あるいは延命が可能なため、嘔吐などの消化器症状があれば、早めに病院に行く。
●猫は腹部触診で肝臓と胃以外はかなり隅々まで触知可能。ワクチン接種や健康診断時には、脾臓・腸管・腎臓・膀胱などを丹念に触診してもらう。

<5月21日分-犬・猫の腫瘍のまとめと診断法->

A.犬・猫の腫瘍のまとめ
●犬も猫も皮膚や乳腺腫瘍など体表の腫瘍が多く、猫で第1位であるリンパ腫もその多くが体表のリンパ節が腫大することから、いずれも手で触知可能な腫瘍が多い。部位別の発生率では6~8割が体表の腫瘍である。
●体表の腫瘍については、後で述べる診断法で迅速に診断し、早期の外科的切除を行う。
●残念ながら、目に見えないところ(腹腔内や胸腔内)の腫瘍は悪性が多いが、高齢になったら、定期的に病院に行き、腹部触診や超音波検査などを積極的に受ける。
●乳癌は初回発情前の避妊手術で、猫のリンパ腫は猫白血病ウイルスや猫エイズワクチンの接種でリスクを軽減可能である。ワクチネーションの積極的実施。

B.診断法
1.細胞診(針吸引細胞診)
●体表や口腔内など目に見える箇所では注射針と注射ポンプを用い、針を刺してポンプを吸引・陰圧にして細胞を採取する。
●80%の正診率だが、あくまでも腫瘍か腫瘍でない(例えば炎症)か、良性か悪性疑いかを判断し、外科的に切除すべきかを決める。疑わしきは手術することを決める検査である。
●皮膚の悪性腫瘍の親玉「肥満細胞腫」は細胞診で100%が診断可能である。
●乳腺に関する正診率は60%であるが、一応行い、疑わしきは外科的に切除する。
●腹腔内や胸腔内の腫瘤については、針を刺すことには慎重でなくてはならない。悪性腫瘍では血小板が極端に減少していることも少なくない。
●腹腔内や胸腔内に液体が貯留している場合には、針を刺して液体を採取し、鑑別診断を実施する。
●安価で迅速性であるが、病理や細胞診に精通した獣医師が鏡検・診断しなければならない。

2.組織診断
●細胞診で診断を迷った場合には、コア(綿棒の先程度)で組織を採取し、ホルマリン固定して、組織診断を仰ぐ。
●細胞診でも悪性が疑われ、最悪の場合、断脚を余儀なくされるとか、腫瘍の摘出後に皮膚移植が想定されるような場合には、組織診断を実施して治療計画・作戦を練ることが望ましい。
●費用はそれほど高くないが、診断が出るまでに時間がかかる。

 
 人の場合、「乳腺にシコリを発見」したら、翌日には病院へ直行するのが普通です。犬や猫でも体表に異常な腫瘤を見つけたら、早めに病院を訪ねましょう。犬・猫は人の4~5倍のスピードで老化が進みます。癌の進行も人に比べ早いことを認識しておきましょう。

以上  

                                 

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