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新春の「ニシタチ放浪記」

 正月ほど面白くないものはない。正確には大晦日から市場が開くまでの1週間で、鮮魚にありつけないからだ。

 今回の年末・年始の夜間病院も多忙を極めたが、小生を除く獣医師3名とスタッフの献身的奉仕で無事にのりきる事ができた。小生の出番は正月2日の小手術と、3日の串間市から来院したチワワの帝王切開だけであったから、肝臓もろとも十分休養させて頂いた。チワワは午前6時に破水したとのことだが、13時間以上経過していたのにもかかわらず、3頭全部無事取り上げることに成功した。
 
 4日の夕刻、本コラムにも登場願う、中央通の「座王」の大将・高木さんより携帯がはいった。青島どれの「餅鰹」が入手できたとのことだ。早速駆けつけ馳走になった。大将曰く、「青島に契約の漁師が居て、元旦から漁に出てくれるんですよ」。正月に限った「雑煮餅」も悪くはないが、春(正月)一番の「餅鰹」は、鮮魚に飢えた胃袋には「お年玉」ものであった。それにしても、宗教的な理由からか定かではないが、正月はきっちり休むのが「漁師」さんと思っていたが、これも好い方向での時代の変化と受け止めたい。
 
 さてさて、4日間も充分なアルコールが浸み込んでいない肝臓と脳細胞は、「しょうちゅうくれ魂」を2次会へと誘わせる。年明けだけあって、日曜日なのに「ニシタチ」の人通りは少なくない。「店も結構開いているではないか」と、物色していると、宮崎焼酎バーの老舗「ブルー・ツリー」のマスターとバッタリ出会す。いつものようにマスター御手製のつまみが入った袋をぶら提げての「出勤いでたち」であった。連れのものと同じエレベーターに乗り、入店。さっそく、焼酎だ。マスターが丸椅子に登り、手を伸ばして上段の棚から出してくれたのが1年もの、3年もの、10年ものの「森伊蔵(鹿児島・森伊蔵酒造)」であった。10年ものはさすがのマスターでも入手に骨が折れるそうだ。時を置かずして出された「5点盛り御手製つまみ」の胡瓜の塩漬けの丸太、蓮の酢漬け、蕪の浅漬け、竹輪1本、大判のサラミ。呑み助には応えられなく、キツイ焼酎にはもってこいの「アテ」である。「日南娘(ひなむすめ、日南市・宮田本店)」、「月の中(西都市・岩倉酒造場)」、「川越(国富町・川越酒造場)」なぞ宮崎の銘酒も頂いた。いつものことだが、30分もしないうちに満席となった。マスターが醸す濃いフェロモンのためか、不思議とこの店には女性客、それも美女・淑女系が多い。同夜も他席に美女が居たためか、苺の「章(あき)姫」を頂いた。マスターが若い時分、焼酎で焼いたと思われるドスの利いた「喉」で、「網走番外地」を聞かせてもらった。女房手作りの「御屠蘇」もいいが、好きな銘柄が何時行っても馳走になれる「ブルー・ツリー」は「宮崎の宝」である。
 
 「いい酒、いい人、いい肴」とは、「居酒屋紀行シリーズ」(旅チャンネル=277で随時(繰り返し)放送中)の太田和彦氏の言葉だ。同氏は「居酒屋の居は居心地の居」とも教えてくれる。太田氏のように「いい酒、いい人、いい肴」を求めて北海道から沖縄まで全国を行脚するわけにはいかないが、「3拍子」そろった「居酒屋」を探求する貪欲さだけは持ち続けたいものだ。それにしても、「今日も呑まずには居られない」生活から、「明日も何もないから好きなだけ呑める」生活は、果たして小生にも訪れてくれるのだろうか。全国の「居酒屋放浪者」に加護あれ!

追:余談ですが、太田和彦氏は「居酒屋探訪家」で、「酒場放浪記」の吉田類氏は「居酒屋放浪者」なのか。そして小生は単なる「しょうちゅうくれ」なのか。ふっと真剣に考えてしまいました。今年の最初で、そして生涯の設問となりそうですが。俗世の「酒愛好家」の皆様、もし名刺に書くとしたらどうします?

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